長崎県貿易協会上海代表処
上海平野磁気有限公司

??????モーター?スピーカーなど、磁気応用製品の着磁時に使用される電源装置の製造販売を目的として1994年に中国に進出。独自の現地化経営で上海での事業を成功させた長崎県平戸市出身、上海平野磁気有限公司 董事長 平野 信幸氏に、中国進出にあたっての課題を伺った。
中国に進出したい!中国と商売がしたい!でも、どうしたらいいか分からない???。そんな悩みを抱えている皆様の参考にしていただければと考える。

??????昨今、「世界の工場」と注目されている中国に進出するには、越えなければならない多くの課題があります。この難問に留意せず安易に進出行うと、結果を得る事なく撤退を余儀なくされることになりかねません。
??????1.中国進出の課題

1)現地調査?情報の収集

○工場の設立場所
工場をどこに設立するかで、必要な経費は大きく異なり、費用が少なくて済む地域では、それに伴いインフラや人材?制度等の諸問題も考慮する必要があります。
○外注協力工場
外注協力工場の品質?技術レベルは当初からは期待しないほうが無難です。設備の性能等の問題もあり、「時間を掛けて育てる」気持ちが必要です。
○部品資材及び機器の調達等
最近は日本製の部品も中国で入手できるようになりましたが、価格は日本の2割以上高くなっております。中国製は安く入手出来ますが、中国では商社機能が少ないためにその情報の収集が困難です。性能?品質の安定?耐久性等にも留意する必要があります。
2)投資資金

??????上海における外資企業の最低資本金として20万ドルが必要となります。
??????実際の事業立ち上げには余裕を持った時間が必要で、その間の経費を充分に考慮しておかなければありません。スタッフ200名程度の規模の場合、事業立ち上げまで2年を要すると2億円程度の資金が必要と推測されます。(設備投資を除く)
3)事業パートナー

??????事業を成功させるために最も重要なものは事業のパートナーです。独資による進出であっても、実際に業務を推進するのは中国人スタッフであり、社員の立場でも現地責任者の資質は事業推進に最も重要な要素となります。独資であれば尚更に現地責任者をパートナーとして重要視しなければなりません。
??????旧知の知人や自社在職中の中国人を現地責任者としても、必ずしも容易に事業が遂行出来るとは限らず、友人?知人に頼って目算を誤る事例も多々見受けられます。
4)事業立ち上げ

??????実際の事業立ち上げには現地事情に精通した人でなければならず、そのスタッフの人選には大手企業でも苦労をしているのが実状です。進出計画の過程では社内に精通した人材が無いのが普通で、外部の人材を登用するか助言者を求める事になります。この場合性急に結論を出さず、時間をかけて判断する余裕が必要です。
5)自社派遣社員(駐在員)

??????事業を行い管理するには、自社のスタッフを駐在員として派遣させなければなりません。この場合、自社で最も信頼でき技術的に優れ、経営感覚を持った社員を派遣する必要があります。これは自社における貴重な戦力を削がれることとなります。
??????また、現地に社員派遣を行う場合、約2,000万円(一人/年間)の費用が必要です。
6)現地スタッフの教育

??????現地スタッフの採用?教育にも多くの費用と時間が必要です。教育には中国の文化?価値観に留意した上で、出来る限る速く、自社企業文化の浸透を図ることが重要です。
7)工場管理?運営

??????実際に工場を立ち上げた場合、現地スタッフを管理し、事業を推進するには中国の文化?習慣を理解し、対外活動や法律等の問題にも対処しなければなりません。価値観の合わない所、理解し難い点は全て「中国の文化である」として、まず受け入れる寛容さが必要です。
??????2.中国進出目的と対応

??????中国進出を検討する際には社会状況に流されることなく、自社の中国進出の目的を明確にする事が重要です。
??????1)中国進出の主目的と事業内容

??????製造コストの削減を目的にする場合:削減目標と生産移転の規模
??????中国進出取引先の要請による場合:取引先との取引状況に見合う投資規模
??????保守および営業拠点の場合:現行の取引件数と潜在市場
??????中国市場獲得のための進出の場合:競合他社の動静と市場規模及び将来性
??????2)進出形態の違いによる対応

??????単独資本:100%日本からの出資、設立から運営まで自己責任で行う必要がある。
※充分な情報収集と周到な準備が必要で、安易な決定は禁物。
??????合弁事業:中国企業との合弁、責任の分担が出来るが経営に自由度がなくなる。
※合弁相手経営責任者との事業目標を一致させることが重要。
??????委託生産:リスクが小さく試験的な進出が可能だが品質維持には留意が必要である。
※委託先の経営状況と技術レベルを充分に確認。
??????駐在員事務所:情報収集のみで営業活動は禁止されている。
??????3)派遣社員の人選、人材確保の方法

社内派遣社員の人選
中国人現地責任者の人選
スタッフ?ワーカーの人材確保
??????4)投資資金の規模

設立費用?投資資本金?設備投資金額?事業立ち上げ運転資金
??????5)事業計画

会社設立までの予定
製品生産までの予定
単年度黒字までの目標
投資回収計画および市場分析
それぞれの過程における最悪のシナリオとその対応
??????3.中国進出における留意事項

1)「郷に入りては、郷に従え」
中国の文化を理解する。(日本の常識?ルールは通用しない事を認識すべし。)
2)「事業成功の鍵は、中国の人材にあり」
偏見を捨てて、情熱と信頼、忍耐と辛抱で人材を育てる。
3)時間を掛けて、お金を賭けない。(急いては事を仕損じる。)
すべてのことにおいて時間をかけて検討し、結論を急がない。
4)小さく産んで、大きく育てる。
出来る限り初期投資を少なくして、事業の進展に伴い必要であれば再投資を行う。
5)面子?形式に拘らない。
進出の形式による面子に拘ってはならない。(見栄は百害あって一利なし)
6)社運を賭けてはならない。
「帰らざる橋を渡る」冒険をしてはならない。いつでも撤退出来る余裕が必要。
7)人情的にならない。
中国でのビジネスはドライに割り切ることが肝要、情けは仇となることが多い。
8)中国通?日本通に要注意!
中国通の日本人、日本通の中国人には要注意!
コンサルタントは助言者であって、事業家ではないことを認識すべし。
一人の人脈や情報に頼りきらず、情報は複数のルートで収集して判断する事が重要。
9)日本在住の中国人はビジネスにおいては全くの素人
民間資本による事業の自由化は実質的には99年からで、わずか3年しか経過していない。
この間に制度の変更は度々行われており、実質的な事業経営を継続している者でなければ過去の経験?情報は殆ど通用しない。日本在住の中国人は「浦島太郎」となっている可能性が大きい。信頼できる人といえども事業展開に過度な期待と信頼は禁物である。
10)経済観念は現地物価を基準とする。
全ての価値は現地物価で判断すべし。結して日本の価値観で判断してはならない。
上海での人件費:15000円/月?680円/日当?85円/時間単価
??????4.中国進出において日本企業?経営者が懸念する事項

1)中国ではルールの変更が頻繁で安心が出来ない。
中国では確かにルールの変更が頻繁で、予告なく施行されます。これは別の視点から観れば、現状に合わない規則は直に撤廃されると言う事でもあります。現在の硬直した日本のような「変わらない、変えられない」社会よりはるかに柔軟な制度であると感じます。
2)特許侵害等の問題
過去、日本においても海外製品の模倣によって技術力を向上させたのであり、韓国そして台湾も同様です。肯定するものではありませんが、中国だけが模倣の非難をされるのも如何なものかと思います。(振り返ればそこには我身が映っている。)
特許侵害に関しては、その使用料が中国企業の経済力に見合う提案がなされなければ、中国側から観れば「ライセンスを供与する意図がない。」と思われても無理のない事ではないでしょうか。中国企業にとって支払い不可能なライセンス料の要求?価値の押付けはコピー品を産ませる一つの要因となることも留意することが必要です。
3)社内技術が流出してライバルになる可能性がある。
自社の社員が会社で学んだ技術を持ってスピンアウトし、ライバルとなることは日本でも珍しい事ではなく、違法行為でもありません。問題は社内で努力しても報われない企業体質こそが問われなければなりません。特に中国進出の日本企業は、事業の現地化に対する意図が見えず、日本人スタッフは常に日本本社を見て業務を行っているのが殆どです。
このような状況では優秀な中国人スタッフが将来について夢が持てず、外に活躍の場を求める事も充分に理解出来ます。信用力や技術力?営業力を常に強化し、ライバルが誕生しても競争力が保てるように、日々心がけておくことが必要ではないでしょうか。
4)日本の技術流出についてどのように思うか。
嘗ては日本も、アメリカやヨーロッパから技術を学び、独自の創意工夫によって技術大国?経済大国となりました。技術の移転?流出は歴史的必然性であり、止める事の出来ない流れです。むしろ流出すると言う前提に立ち、危機感を持ってこそ新しい発想による、技術革新が出来るのだと思います。(持てる者は寛容になることも必要)
「中国に製造を持って行った者が技術を流出させ、日本の産業を困難にしている」と言う非難は、歴史的な事実を認識していない不遜な考えではないでしょうか。
5)産業の空洞化?失業の増大についてはどう思うか。
この問題は政治的課題であり、一企業経営者にその責任を転嫁するような風潮は如何なものかと思います。数千人の従業員を雇用する代表者であれば、社会的責任と影響力も大きいと思いますが、現実にはそのような企業の多くは海外進出を果しております。
6)中国政府?要人とのコネクション?人脈が必要
事業内容によると思いますが、企業相手の産業では人脈は必要ありません。
むしろマイナスには作用することもあり、迂闊に人脈に頼らないことが懸命です。
7)売上の回収
日本のような信用取引きや手形決済制度は無く、設備取引の場合は前金(20~50%)と納品時残金支払いが前提で、弊社では過去7年で回収のトラブルは殆どありません。
8)中国通?日本通に要注意!
中国では事業利益の内部留保的考えは少なく、利益の多くは株主配当されます。
独資会社?合弁会社では配当を海外送金することには問題ありません。又余剰資金によって日本への再投資の機会もあります。
個人的な考えですが、中国は今後10年程度の成長率は5%以上と予測されております.
その意味では、成長の期待出来ない日本に金融資産を持ち出すより、中国国内において本業あるいは新事業に再投資をする方が将来への期待は大きいのではないでしょうか。
現在、中国の通貨である人民元はドルとの固定相場となっておりますが、将来においてその切り上げが行われることは確実であると思います。(相対的金融資産価値が上がる。)
(利益のことは儲けてから心配しましょう!)
??????5.中国への対応
多くの日本企業経営者に中国の状況や問題等につきましてご質問を受け、またご意見をお伺いすることがあります。その殆どの方は中国の問題のみを取り上げ、自社(日本)の問題を問題として認識していない事を感じます。中国での懸念は自社(日本)の問題として現にあること、経験してきたことと同じ問題であると再確認する必要があります。
勿論、中国は異国であり、環境も歴史も違います。日本とは異なる価値観?文化を持っており、それを障害と捉えることなく、まず受け入れることが寛容です。受け入れることが出来たとき、始めてその対応が可能となるのだと確信します。否定をしていたままでは誹謗?中傷が生まれるだけで何ら解決にはなりません。
始めて食する食べ物は、食べてみなければその味を知ることは出来ません。しかしその食材?調味料?料理方法の情報を入手できれば、推測は可能となるでしょう。これまでの先入観を捨て、企業経営者自らが、中国の空気を肌で感じ、情報の収集と分析を行って、自社の将来を見据えて決断することが重要です。
このレポートは私の事業経験の過程で実体験によって感じたものです。意見を異にする個所もあると思いますが、今後中国進出を検討される日本企業様の中国情報の一部として、ご参考にしていただければ幸いです。
中国では事業利益の内部留保的考えは少なく、利益の多くは株主配当されます。

※参考資料

項  目 中国 日本
人  数 200名 25名
工  場 2000㎡ 500㎡
単位:万円
経費項目 経費比率 売上比率 経費比率 売上比率
人件費 4,000 31.50% 8.00% 12,000 66.67% 24.00%
福利厚生費 1,200 9.45% 2.40% 2,000 11.11% 4.00%
交通費 1,000 7.87% 2.00% 1,000 5.56% 2.00%
通信費 200 1.57% 0.40% 400 2.22% 0.80%
光熱費 200 1.57% 0.40% 300 1.67% 0.60%
賃貸費 400 3.15% 0.80% 800 4.44% 1.60%
その他 500 3.94% 1.00% 1,000 5.56% 2.00%
償却費 200 1.57% 0.40% 500 2.78% 1.00%
駐在費 5,000 39.37% 10.00%
小計 12,700 25.40% 18,000 36.00%
売   上 50,000 100.00% 50,000 100.00%
製造原価 25,000 50.00% 30,000 60.00%
製造利益 25,000 50.00% 20,000 40.00%
事業利益 12,300 24.60% 2,000 4.00%

上海平野磁気有限公司の社屋 上海平野磁気有限公司の社屋

~本社営業所上海市普陀区同普路1225号長征工業区7号楼
TEL:001-86-21-3202-3315
FAX:001-86-21-3202-3314
~東京営業所

東京都豊島区東池袋2-54-2-203号
TEL:03-5992-7141
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