長崎県貿易協会上海代表処
「炙屋」を「上海標準」の店に育てたい!

2002年09月110号

「炙屋」を「上海標準」の店に育てたい!

  炭火焼懐石 炙屋(あぶりや)

 店長  坂下 浩盛(さかした こうせい)氏

プロフィール
坂下 浩盛 1973年 10月20日 長崎市出身 28歳
1994年 曙産業株式会社入社、曙産業グループ企業、西日本サッシ工業を経て、
1999年 上海豊泰久保餐飲有限公司「串乃屋」に赴任。
2000年 「炙屋」開業の為に店長として異動。
2001年 10月「炙屋」オープン。
趣味:ゴルフ
家族:妻(炙屋で共に勤務)

● 念願の海外勤務でした
~中国赴任へのきっかけを教えてください。
??????もともと海外で仕事をするということは幼い頃からの夢でした。それを実現するために会社に希望を出したのがきっかけでした。それが通り、「串揚げ専門店」の上海豊泰久保餐飲有限公司「串乃屋」への赴任が決まりました。
??????曙産業に入社後の配属は工事管理部でした。その後、グループ企業である西日本サッシ工業に異動して、営業を担当していましたので、当然飲食業は未経験でした。もともと料理を自分で作るのは好きでしたので、上海に行く前の3ヶ月間の研修は楽しみながらやりましたね。
??????しかし上海に来てからは悩みました。1ヶ月は旅行気分でとても楽しかったんですが、慣れてくると「言葉」「生活習慣」「衛生面」で予想外に苦しみました。「はたして自分はこの国に慣れることが出来るのだろうか?」と悩みましたが、不思議と日本に帰りたいとまでは思いませんでした。念願の海外勤務なわけですからね。
● 「コミュニケーション重視」で接しました
~「串乃屋」でのエピソードについて教えてください。
??????「串乃屋」では先に赴任していた「小杉(現「串乃屋」店長)」と「三原(現曙グループ:アックス代表取締役)」が店の道筋を作っていてくれたので、とても助かりました。それでも、異国での初めての仕事、そして初めての外国人との仕事でしたので苦労も多かったですね。やはり「言葉」の問題と「日本の常識」が通じないことに悩まされました。特に「日本の常識」についてですが、まるで、子供と仕事をしている感覚に襲われました。私自身「日本人の常識」が頭の中で固まっていたので、それが通じない彼らに憤りを感じることもしばしばありました。相手は中国人なのだから「日本人の常識」が通じないということは当たり前なんですけどね。それが最初は理解できなかったんです。ですから最初はあまり彼らに積極的に接触はしませんでした。しかしそれではやはり仕事はうまくいかないんです。
??????監督職として日本人が中国で勤務する場合、「日本人は日本人だ」という考える人と、「コミュニケーション重視」で中国にとけ込む人がいますが、私は、メリハリや監督者と従業員の境目を意識し、「コミュニケーション重視」で対応するように努めました。しかし、歩み寄りすぎて、近づきすぎると友達感覚になってしまいメリハリがつかなりますので、そこには特別注意を払いましたね。
● 情報は足で稼がねばなりません
~「炙屋」オープンのご苦労について教えてください。
??????上海へ来て、約6ヶ月で「串乃屋2号店」オープンの計画がでました。「串乃屋」が順調に黒字経営を続けている良いタイミングで、2号店をオープンしようということになったんです。その時に、長崎のコンサルティング担当者が「炙屋」も同時オープンさせようというアイディアを持ってきたのが最初です。当初は、1階を「炙屋」2階を「串乃屋」という案がありましたが、結局1、2階とも「炙屋」のみの計画となりました。
??????そこで「炙屋」出店の責任者が私に決定しました。まず、場所の選択から始めました。上海市内の地図に、日本人居住区、日系企業の集中地区、日本人学校などをマークして出店するには何処が一番良い場所かをマーケティングしました。この作業で上海の日本人関連の地区や建物が予想以上に多いことを知ることができました。ある程度の場所を絞り込んだ後は物件探しに取りかかりました。投資金額が大きかったので慎重に行いました。上海の不動産会社を10社以上巡り、徹底的にリサーチしました。足を運ぶことで知り得た教訓がたくさんありましたね。特に不動産会社の言うことを100%信じてはいけないということ。飲食店が許可されていない場所を紹介されたり、家賃がオーナーの言い値で相場とかけ離れていたり、飲食店なのに水回りが整っていない物件を紹介されたりと苦労が絶えませんでした。物件探しの時は、疑ってかかることが肝心ですね。
??????足で情報をかき集めた結果、運良く今の場所(東平路)に決定しました。形態も物件のオーナーが飲食業を営んでいた関係で、営業許可証を借りて賃料を支払うという、最も理想的な形となりました。
● 契約は慎重に
~飲食店の出店についてのアドバイスをお願いします。
??????飲食店の出店に際しては、独資は投資金額がかかりすぎる点や、許可関係がスムーズに進まないなどのデメリットが多いため勧められません。合弁の場合だと金額面や許可関係もスムーズにいきます。もちろん、合弁相手の選択が一番重要であるということは言うまでもありません。
??????実際に合弁相手が決定した後は契約書を取り交わすわけですが、貸す方に有利な契約書になっている場合が多いのでより注意が必要です。変に妥協してしまうと後で泣きを見ることになりますから、契約の際に弁護士をたてるなどお金をかけることも必要です。 我々も、法律で護られたきちんとした契約を行うため、お互いに弁護士をたてて契約を取り交わしました。契約書も1ヶ月以上かけて吟味しました。
??????契約のみならず、許可関係などでも裏技を使い、裏金を渡している業者もいると聞きますが、我々は違法行為は一切行わないよう努めました。
● 「態度」が重要なポイントです
~人材探しが大変だと聞きますが。? ? ? 人材募集は開店の3ヶ月前から新聞に広告を出すことで開始しました。コックに関しては200名の応募の中から6名(内4名素人)を選びました。ウエイトレスはある程度の日本語能力が必要ですので慎重に選びました。人材探しでのエピソードとしては、面接前に簡単な日本語能力のアンケートを行った時、おもしろい結果が出たのが印象深かったですね。それは、「A:日本語が充分に話せる」「B:少し話せる」「C:ほとんど話せない」との問いに、日本語が堪能な人ほど「C」に印をつけ、話せない人ほど「A」に印をつける傾向が強かった点です。また、コックについても、経験者に日本料理で作れる料理は?との問いに「ほとんど作れる」と答える人ほど「単に見たことがある」だけだったり(笑)。

また、いわゆる「態度」を重視して選びました。隠せない本来の姿とでもいいますか、面接で店に入ってくる態度から既にチェックを始めていました。店に入って来るや否や、即、帰ってもらった人も結構いましたね。彼らにはなぜ自分が面接もしないのに5秒足らずで不採用になったか理解できなかっただろうと思います。少々酷なようですが、心からのサービスをモットーとしている当店ではある程度の常識をわきまえている人しか採用できないのです。

● サービスとは何たるか?を教えることが肝心です
~オープンは滞りなく進みましたか?
??????「炙屋」は7月に着工し、8月には完成する予定だったんですが、APECの関係や陶器(こだわりの)の納入が遅れたことなどが重なり、10月24日にオープンがずれ込んでしまいました。徹底的に日本的な店を作りたいというこだわりから遅れてしまったということもあります。結果、遅れても満足いく店作りができました。
??????1階と2階に客席がある店舗の運営が意外に難しくて驚きました。リフトで食事を上げ下げするんですが、1週間で使うのをやめました。日本では考えられないんですが、食事が2階に上がったことの伝達がきちんと出来ず、リフト内に食事がそのままになるんです。スタッフに失敗をとがめると、責任転嫁が始まります。食事が届けることが出来なかった事実よりも、誰の責任か?ということに彼らは力点を置きます。そうじゃないんです。サービスとは何たるかを説明するのに苦労がいるのは中国ならではでしょう。
● マーケティングは欠かせません
~運営面でのご苦労を教えてください。
??????スタッフのピンハネの話を良く聞きますが、これには我々も注意を払っています。酒、野菜、肉類などの調達を任されている人はマージンをとっていると言う話を良く聞きますね。ですから、私は出来るだけリサーチをして、担当者が適正価格で仕入れているのか?マージンを取っていないか?に目を光らせています。開店後も顧客確保のマーケティングだけでなく、スタッフの不正を未然に防ぐマーケティングを欠かしてはいけません。そして、もしそれを見つけたらもちろん「いけないことである」と諭すようにし、且つ悔しいですが、目をつぶることも必要だろうと考えています。ここは日本ではなく中国なんですから。サービスは日本的なものを徹底的にたたき込めても、商習慣は中国独自のもの。簡単に日本人の論理が通るはずはありませんからね。しかし、和を乱したり、不正が激しい人についてはスパッと辞めさせる勇気も必要です。
● 「上海標準」の店作りを行います
~今後の「炙屋」の展開について教えてください。

??????また、「上海標準」とでもいいましょうか、常に変化していく店を目指したいと思います。上海の人は移り気です。飽きられてしまえばおしまい。今は「炙屋」スタイルの店は少ないですから良いですが、今後似た店が出来てしまえば、なびかれてしまいますからね。
??????上海には日本料理店が数多くあります。しかし、本物の日本的サービスができる店はまだ少ないと言えます。「中国人スタッフ」が「最高の日本的サービス」を提供する。これが日本人には喜ばれます。さりげないサービスを自分から出来るようになるよう教育していきたいと思っています。そのためにも、中国人スタッフには、「お客様が入店してから、帰られるまで、そしてトイレに至るまですべてが注文された料理の金額に含まれている」ことを徹底的に叩き込んでいます。そしてそのお客様が払われた料金が給料となっていることを教え込むことにしています。
● 日本人としての魅力をアピール
~今後の個人的な抱負をお願いいたします。
??????個人的には、自分自身もっと中国のことを勉強して、様々なことを身に付けたいと考えています。独立して上海か長崎で飲食店が開けたらいいな、なんて思ったりもしますが、今は「炙屋」を軌道に乗せ、将来的には、自分がいなくともやっていける店作りをしていくことが大事だと考えています。
??????昨年結婚したんですが、忙しくて妻とは1年に2回くらいしか買い物に行ってません(笑)。ずっと今まで年中無休でやってきましたからね。とりあえず後1年頑張って、ある程度店が軌道に乗ったところで、休みでも取りたいですね。これが今一番の抱負というか希望かな(笑)。
~ありがとうございました。
炭火焼懐石「炙屋」
上海市東平路18号
TEL:021-6437-6867
営業時間:AM11:30~PM2:00
PM5:30~AM12:00
(オーダーストップPM11:00)
串懐石料理「串乃屋」
上海市古北新区黄金城道818号
TEL:021-6278-0749
営業時間:AM11:30~PM2:00
PM5:30~AM12:00
(オーダーストップPM11:00)

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